その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は小松勝男さん、小松道男さんの『 金型の教科書 トラブルを未然に防ぐ 開発ノウハウを網羅 』です。
【はじめに】
忘れてはいけないよ。
本に書いてあることや学校で学んだことが
常に正しいとは限らないんだ。
フェリット・エドギュ(著)、木原興平(訳)『最後の授業』
〔出所:人見勝人(京都大学名誉教授):入門編生産システム工学〕
現世人類であるホモ・サピエンスが40万年くらい前に地球に現れ、紀元前7000年ごろには農耕文明が始まったと考えられています。私たちの祖先は石器や道具を造り、より豊かな生活を営む工夫を重ねて現在に至りました。様々な物を効率的に作り出す道具として「型」が発明され、木型が石型へ進化して、さらに丈夫で長持ちする青銅型が現れました。やがてそれは鉄型へ進化し、今日の金型(かながた)につながっています。
18世紀半ばの蒸気機関の発明に端を発する産業革命が人類の生活を一変させ、近代社会の急速な発展を促しました。自転車や自動車、航空機、家電製品、電子部品、食品容器、建設資材などあらゆる分野で金型から生み出された金属製品やガラス製品、プラスチック部品が今日の文明社会を支えています。
しかし、産業革命から180年が経過した現在、石炭や石油などの化石燃料から放出された二酸化炭素(CO2)が大気中に蓄積し、地球の温暖化が進んで深刻な気候変動が起き始めています。また、海洋へ流出したプラスチックごみがマイクロプラスチック化し、有害物質を高濃度で吸着して魚介類を介した生物濃縮による人類への悪影響が懸念されています。
これからの私たちには金型を使いこなして有用な製品を効率的に生産するだけではなく、造られた製品が寿命を終えたときに持続可能的に再生利用したり、できる限り地球環境に負荷がかからないようにする工夫〔サーキュラーエコノミー(循環経済)など〕をしたりすることが求められます。
本書は、金型の世界へ足を踏み出そうとする人々へ金型の存在意義や、これまでの金型づくりとこれからの金型づくりの不変な点と相違点の認識、不鮮明な未来を見通せる次世代のものづくりを目指す着眼点について解説します。
新進気鋭の29歳技術士と金型業界41年のベテラン技術士の親子がタッグを組み、金型設計を学びたい人から金型を造りたい人、金型を使いたい人にまで役立つようできる限り分かりやすくまとめました。
信頼できるエビデンスを基に執筆を心掛けましたが、正確に伝えきれていない箇所があるかもしれません。読者諸氏におかれましては、お気付きの点があれば、ぜひご指摘ください。再版時などに鋭意ブラッシュアップすることができたら幸いです。
小松勝男
小松道男
【目次】





