「異なるブロックチェーン同士の相互運用性がないという課題を解決し、世界をつなぎたい」と強い情熱をもってWeb3.0(Web3)の実現に挑む起業家の渡辺創太さん。Web3の世界で活躍するためには、どのようなスキルやマインドが必要なのでしょうか。『 仮想通貨とWeb3.0革命 』(日本経済新聞出版)の著者、千野剛司さんと語り合いました。本書から抜粋、再構成してお届け。

責任の重さと成長速度は比例

これからWeb3の世界に参加したい、でもプログラミングはできないという人が活躍できる場はありますか。

渡辺創太さん(以下、渡辺) あります。具体的に言うと、しっかり分析ができて、戦略が立てられて、次にやることがクリアにできる人材は非常に重要ですね。僕は大ざっぱな人間なので、そういうことができるチームが社内にいます。僕としては、「視座をめちゃくちゃ高く置いておく」のが仕事です。

 お金がモチベーションになっている人は、瞬間的には頑張るんですが、長期的には無理なんです。自分たちが今やっている仕事が歴史的にどれくらい重要なのか、何につながっているのかということを言葉で伝えるのが僕の仕事です。

千野剛司さん(以下、千野) 多分、そこにひかれて入ってくる人じゃないと無理でしょうね。DAO(自律分散型組織)の世界においては、お金だけがモチベーションというのは難しいと思います。渡辺さんは26歳にしてすでに一流の経営者と同じ確固たる信念と哲学を持っていますね。

渡辺 最初はみんなできないですよ。でも、人は背負っている責任の重さと成長速度が比例するんだと思います。経営者としては、人を雇っちゃうとその人の人生を支えなきゃいけない。資金調達も人のお金なので、しっかり返さないといけない。そうすると、がむしゃらに勉強しますよね。

千野 背負っているものが大きいから、追い込むと。

渡辺 それはすごく重要だと思いますね。僕はもともとスポーツをやっていたときに学んだんですが、そんな才能があるわけじゃないから、「誰よりもやる」「誰でもできることを、誰にもできないくらい、自分はやる」と決めて、日々練習していました。そうすると、「自分は自分で見ても一番頑張っているから大丈夫だ」と自信がついてくるんですよね。

千野 いい話だ。

「背負っているものが大きいから、自分を追い込むようになります」と語る千野さん
「背負っているものが大きいから、自分を追い込むようになります」と語る千野さん
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好奇心と気合でグローバルに挑む

渡辺 今も誰よりも仕事をしていると思います。だってグローバルだからタイムゾーンも違うし、朝から晩まで働いてますよ。

千野 でも、働くの好きでしょ(笑)。もちろんマネジメントしていて、責任があるからやらなきゃいけないのもあるだろうけど、楽しいからですよね。きっと時間的な大変さを凌駕(りょうが)する何かがあるはずです。既存の社会的権威や上下関係と関係のないDAO的な社会では働き方も変わってくると思います。どうでしょう、これから第2、第3の渡辺創太は出てきますか。

渡辺 僕ってスキルセットだけで見れば、誰でも代替可能なんですよ。英語のネーティブスピーカーじゃないし、天才プログラマーでもないわけです。最初からブロックチェーンにアドバンテージがあったわけではない。だから結局、好奇心と気合ですよね。

千野 気合! 面白いですね。ブロックチェーンの話をしているのに、実は気合が大事という根性論(笑)。

そこだけ聞くと、日本の子どもは「自分もできるかも」と思うかも。

渡辺 思ってほしいですね。

千野 「どうせ無理だよ」とか言われたことはありましたか。

渡辺 シリコンバレーに行ったとき、現地の日本から来た駐在員に「大学生だし、シリコンバレーの企業で働くのは難しいと思うよ」とか、めっちゃ言われたんですよ。でも、働けました。とはいえ、僕はただ単にいっぱいメールを送ってアプローチしただけなので、特別なことはしていません。誰でもできることですよ。

千野 でも、それをやり切ったんですよね。

渡辺 何かを始めるとき「お前には無理だよ」という人は出てくるけど、その人たちはたいていやったことがない。だから、あんまり気にせずに、視座を高く持ち、気合で乗り切ればいい。

 これは人生の法則ですが、人はすごく厳(おごそ)かに見えるドアは開けないんです。「違うドアから遠回りしたほうが早そうだな」と思ってしまう。例えば、社会にインパクトを与えたいのに、まずは大企業で働いて、次に転職して、キャリアアップしてベンチャー行く、みたいな積み上げ方式ですよね。

 でも、実はすごく近寄りがたく見えるドアも、片手で開くことって多い。たいてい、そういうところにチャンスがあります。

千野 誰もそんなルールを設定していないのに、日本人は勝手にあきらめているのかもしれないですね。空気を読まない、そこを打破する勢いのある人物がWeb3では求められているのかもしれません。

渡辺 そう。周りの人はそんなに自分のことを気にしていません。だから気にせず、やりたいことをやったほうがいいです。

「空気を読まない、そこを打破する勢いのある人物がWeb3では求められているのかもしれません」と語る渡辺さん(左)と千野さん
「空気を読まない、そこを打破する勢いのある人物がWeb3では求められているのかもしれません」と語る渡辺さん(左)と千野さん
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文/三浦香代子 構成/雨宮百子(日経BOOKプラス編集部) 写真/小野さやか

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DAO(分散型自律組織)、NFT(非代替性トークン)、ステーブルコインほか、仮想通貨とWeb3.0をめぐる最新の動向を解説。米大手暗号資産取引所の日本代表だから語れる、金融とITの未来!

千野剛司(著)/日本経済新聞出版/1980円(税込み)