働き始めて数年たつと、キャリアチェンジを考える人も多くなります。ビジネスパーソンとしての土台を築き、次のステップを意識するこの時期、どのような考え方で本を読めばいいのか、『ビジネスモデル全史(完全版)』『経営戦略全史〔完全版〕』(いずれも日経ビジネス人文庫)著者の三谷宏治さんに、ビジネスパーソンはいつ、どのような本を読むべきかを聞く本連載。最終回はキャリアチェンジ準備期の読書ポートフォリオの考え方とお薦め本について伺いました。
1回目
三谷宏治 読むべき本は「読書ポートフォリオ」で考える
2回目
三谷宏治 就活~社会人1年目の「読書ポートフォリオ」と読むべき本
3回目
社会人2~4年目の読書は「非ビジネス」ジャンルを増やす
4回目
「新奇」「教養」増やし殻を破る 社会人5~10年目の戦略読書
から読む
キャリアチェンジは振り出しに戻る覚悟で
社会人を何年かやっていると、転職について考えることもあるでしょう。転職には2種類あり、キャリアアップ(同じ職種でポジションや給与アップを求める)と、キャリアチェンジ(職種の変更を伴う転職)では、まったく異なります。
キャリアチェンジとなると、時間とお金をかけて社会人大学院(MBA)などに通って自分を磨くか、いったん振り出しに戻って第二新卒的な扱いで転職する覚悟が必要です。今、所属している企業内で希望する職種への異動を試みる方法もあるでしょう。ただいずれの場合にせよ、キャリアチェンジは簡単ではなく、十分な事前の準備が必要です。
とはいえ、自己改造は本気になれば2年でできます。1~2年が勝負と思って覚悟を決め、次のビジネス分野に読書資源を振り向けることが重要です。 第2回 でもお伝えした通り、スマートフォンやSNSなどに投入している時間の半分を読書に回せば、1日80分ほどの時間は捻出できます。週末時間と合わせて年間100冊前後は読めるはずです。
セグメント配分は、次の希望職種・業種の【ビジネス系】を中心に当面は100%で、基礎10冊、関連する応用本90冊のつもりで行きましょう。その職種や業種のビジネスについて理解ができてきたら、【非ビジネス】も復活させます。【ビジネス系】の本の選び方は希望職種にいる友人・知人などにお薦めを聞いてみましょう。できれば複数の人に聞いて、偏りを無くすようにしたいものです。
関係書籍を読むことで自分の進みたいジャンルと向き合う
キャリアチェンジ準備期に読むべき本は、どんな分野を目指すかによりますから、私が最も詳しく説明できる、「経営コンサルタントにキャリアチェンジするとしたら」という視点で、いくつか本を紹介しましょう。
『 決定版 戦略プロフェッショナル 』(三枝匡著、KADOKAWA)は、BCG東京オフィスの日本人コンサルタント第1号だった三枝匡さんが書いた本で、文庫化もされているシリーズ4部作の1冊目です。『戦略プロフェッショナル』『V字回復の経営』『経営パワーの危機』そして『ザ・会社改造』(いずれも日経ビジネス人文庫)と続きます。著者自身が経営コンサルタントとしてどのように企業を変えていったかという実例をベースにした、戦略理論の実践ストーリーが描かれています。
私はBCGに入社した直後、この『戦略プロフェッショナル』を読んで、本当に「かっこいい」「こんなコンサルタントになりたい」と思いました。内容はある企業のシェア逆転への企業変革ドラマであり、そこでの戦略参謀(著者)の思考と決断、行動が描かれています。少なくともこういった本を読んで「面白い」と思えるか、それとも「こんな仕事は大変すぎる」と感じるのかで、業界・職種への適性が分かれます。
また外資系コンサルティング会社での、本当に大変な部分を割と具体的に書いた本としては、『「愚直」論』(ダイヤモンド社)があります。パナソニック、ハーバード・ビジネス・スクール、BCG、Apple、コンパック、日本HP、ダイエー、Microsoft、パナソニックとキャリアを積み重ねた樋口泰行さんの苦闘の物語です。今のBCGとは規模が全然違いますが、キャリア採用の人たちがぶち当たるキャリアチェンジの壁が実感できるかもしれません。
経営コンサルタントを目指すとしたら、基礎や古典はもちろんですが、例えば『 一瞬で大切なことを伝える技術 』(知的生きかた文庫)、『 発想力の全技法 』(PHP文庫)、『 仕事人生を、プレゼン力で変える。 』(日経ビジネス人文庫)、『 シゴトの流れを整える 悩まず慌てず業務をこなす4つの技術 』(PHP文庫)など、ロジカルシンキング、発想力、プレゼン力、生産性向上などコンサルティングスキルとして準備すべきことはたくさんあります。他の業種・職種でも同様でしょう。古典の基礎本を押さえつつ、そのジャンルに必要なスキルや最新理論を学んでいきましょう。
キャリアチェンジではなく、社内でキャリアアップを考えるとしても、何をビジネス系の強みにしたいのか、非ビジネス系で好きなジャンルは何か、自分を一体どんな存在にしたいのかを考え、読書の資源配分を随時見直していく必要があります。
プロフェッショナルの読書法
最後に、ここまで5回にわたって紹介してきた「プロフェッショナルの読書法」をおさらいしておきましょう。
- ビジネス書に偏らないようにしましょう。そして、キャリアのステップごとに、意思を持って自分の読書ポートフォリオを変え、年間100冊の資源配分を見直しましょう。年間100冊を読む時間はスマートフォンやゲームとの付き合い方を変えるだけで生み出せます。通勤通学時間を上手に利用しましょう。
- 本は必然と偶然で選びましょう。読むべき基礎や古典は少数でもいいのでしっかり熟読することが大切です。基礎ができれば応用は粗読みや斜め読みも効率的にできます。書店やネットで見かけてピンときた本、偶然の出合いも大切にしましょう。
- 各セグメントで読み方を変えましょう。
【ビジネス系】は基礎ができたら、序章と図から、読んで面白いファクトやコンセプトを集めるつもりで読みましょう。 - 【非ビジネス】は要不要関係なく読んでいいのです。視野を広げることや視座を高めるようなSFなども食わず嫌いにならずに読んでみてください。
- 読んだ本から得た知識を自分のものにするには、手や口を動かすことです。数字が出てきたら割り算してみる、ファクト同士を組み合わせてみる、読んで得た新しい発見や面白かったことは人に話してみることで、知識が整理されます。相手の知識や情報処理能力に合わせて伝えようとすることで、抽象化したり具体化したり自分自身のスキルにもなっていきます。
この記事で取り上げた本
| 書名 | 著者 | 出版社・レーベル |
|---|---|---|
| 決定版 戦略プロフェッショナル | 三枝匡 | KADOKAWA |
| 一瞬で大切なことを伝える技術 | 三谷宏治 | 知的生きかた文庫 |
| 発想力の全技法 | 三谷宏治 | PHP文庫 |
| 仕事人生を、プレゼン力で変える。 | 三谷宏治 | 日経ビジネス人文庫 |
| シゴトの流れを整える 悩まず慌てず業務をこなす4つの技術 | 三谷宏治 | PHP文庫 |
取材・文/中城邦子、構成/市川史樹(日経BOOKプラス編集)、写真/鈴木愛子
メディチ家「国際為替・決済」から、フォード「垂直統合」、アマゾン「ロングテール」まで画期的なビジネスモデルを、誕生から衰退までストーリー形式でダイナミックに読み解く
三谷宏治著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)
ポーター、コトラー、ミンツバーグ、BCG、マッキンゼー etc. 20世紀初頭から現在まで、100年の間に登場した経営戦略論を紹介します。経営戦略論の変遷を一気読み!
三谷宏治著/日本経済新聞出版/1650円(税込み)








