「日経BPクラシックス」とは?

 日経BPが2008年4月に創刊した「古典新訳」シリーズです。研究者・学者ではなく気鋭のプロ翻訳家を起用し、経済学、経営学、政治学、哲学を中心とした「いま読むべき」古典を、従来の翻訳調ではない平易な日本語訳で刊行しています。

 本シリーズの目的は「一般教養としての古典ではなく、現実の問題に直面し、その解決を求めるための武器としての古典。それを提供すること」にあります。

 「原文に忠実であろうとするあまり、心に迫るものがない無国籍の文体。過去の権威にすがり、何十年にもわたり改めることのなかった翻訳。それをわれわれは一掃しようと考える」(「発刊にあたって」より)

今の「危うさ」に抗するための武器を

 例えば『大暴落1929』。1929年、ウォール街の株価大暴落から世界恐慌へと続く道はいかに敷かれ、なぜ避けられなかったのか。ジョン・K・ガルブレイスが1955年に世に問うた1冊は、時を経て色あせるどころか、バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる「恐慌論」の名著として、今なお光を放ち続けています。

 緊迫の度を増す世界情勢。そんな今だからこそ、地政学の古典『陸と海 世界史的な考察』をひもといてみる。カール・シュミットが「陸の国」と「海の国」の戦いの歴史として浮かび上がらせる世界は、多くの示唆を与えてくれるはずです。

 グレアム・アリソンとフィリップ・ゼリコウの『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版』は、米ソが核戦争の瀬戸際で踏みとどまった1962年10月の13日間の攻防を丹念に考察します。今、世界を覆おうとする「危うさ」にいかに対処すべきか、古典から学べることは驚くほどたくさんあります。

 政治学的なアプローチも多角的に。例えば「自由主義(リバタリアニズム)」について深く知りたいなら、その「三大古典」をシリーズに収録しています。すなわち、ジョン・スチュアート・ミル『自由論』、フリードリッヒ・ハイエク『隷従への道』、ミルトン・フリードマン『資本主義と自由』。じっくり読み解いてみてください。

 2022年7月現在、下記の作品が刊行されています。では改めて「日経BPクラシックス」の世界へ、ようこそ。

■日経BPクラシックス(発行順)
書名 著者 翻訳
『資本主義と自由』 ミルトン・フリードマン 村井章子
『マネジメントーー 務め、責任、実践』(4分冊) ピーター・ドラッカー 有賀裕子
『大暴落1929』 ジョン・K・ガルブレイス 村井章子
『職業としての政治/職業としての学問』 マックス・ウェーバー 中山元訳
『代議士の誕生』 ジェラルド・カーティス 山岡清二・大野一
『大収縮1929-1933 「米国金融史」第7章』 ミルトン・フリードマン、アンナ・シュウォーツ 久保恵美子
『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』 マックス・ウェーバー 中山元
『世界一シンプルな経済学』 ヘンリー・ハズリット 村井章子
『ロンバード街 金融市場の解説』 ウォルター・バジョット 久保恵美子
『自由論』 ジョン・スチュアート・ミル 山岡洋一
『資本論 経済学批判 第1巻』(4分冊) カール・マルクス 中山元
『経済史の構造と変化』 ダグラス・C・ノース 大野一
『歴史主義の貧困』 カール・ポパー 岩坂彰
『道徳感情論』 アダム・スミス 村井章子・北川知子
『グリフィス版 孫子 戦争の技術』 サミュエル・B・グリフィス 漆嶋稔
『赤字の民主主義 ケインズが遺したもの』 ジェームズ・M・ブキャナン、リチャード・E・ワグナー 大野一
『決定の本質 キューバ・ミサイル危機の分析 第2版』(2分冊) グレアム・アリソン、フィリップ・ゼリコウ 漆嶋稔
『資本主義、社会主義、民主主義』(2分冊) ヨーゼフ・シュンペーター 大野一
『隷従への道』 フリードリヒ・ハイエク 村井章子
『世界宗教の経済倫理 序論・中間考察』 マックス・ウェーバー 中山元
『情報経済の鉄則 ネットワーク型経済を生き抜くための戦略ガイド』 カール・シャピロ、ハル・ヴァリアン 大野一
『陸と海 世界史的な考察』 カール・シュミット 中山元
『パールハーバー 警告と決定』 ロバータ・ウォルステッター 北川知子
『貨幣発行自由化論 競争通貨の理論と実行に関する分析』改訂版 フリードリヒ・ハイエク 村井章子
『雇用、金利、通貨の一般理論』 ジョン・メイナード・ケインズ 大野一
『政治神学 主権の学説についての四章』 カール・シュミット 中山元
『危機からの脱出』(2分冊) W・エドワーズ・デミング 漆嶋稔、成沢俊子